チェンライ・エクスプレス
あらすじ
半熟な人外たちが紡ぐノンストップアクション!!
人造人間の少年は、事故で失った人間の心を取り戻したかった……。
出来損ないの魔女は、恋の魔法を覚えて少年の心を奪いたかった……。
これは、チェンライ王国に蠢く欠点だらけな人外による欲望物語。
死神はカマを奪いかえしたかった。狼男は金と宝石を手にしたかった。
人魚は黒歴史を隠し通したかった。吸血鬼はある女の血が欲しかった。
化け兎は愛する男を殺したかった。アンデッドはずっと死にたかった。
謎の男は皆の願いを叶えたかった。
── 誰かの願いが叶う満月の夜、切ない感動のドミノが傾き始める。
人ならぬ者が織りなす新機軸の極東ファンタジー、必読!
レビュー
劣化版・バッカーノ!
第18回電撃小説大賞〈最終選考作品〉。
冒頭から辛口コメントで申し訳無いが、これがこの作品を表す一番的確な表現だと思う。
現代版とお茶を濁そうかと思ったけれど、あえて正直に書かせて頂く。
闇の街でうごめく有象無象達が織りなす、ドタバタ群像劇。
それぞれがそれぞれの欲望の為に行動し、それがいつしか一本の線となっていく。
出てくる人物は死神だったり、狼男だったり、吸血鬼だったり、その行動に予想も付かない破天荒な連中。
一見繋がっていないようで、それぞれの行動が密接に関わり合っているのは群像劇としての見所。
そして、この物語もその群像劇としての魅力は十分にある。
終盤に読者をあっと言わせるようなギミックもあったし、全体的な話の流れも良好。
だけれど、バッカーノ!を既読の私はどうしても物足りなさを感じてしまう。
かの作品は登場人物全員に重要な意味があって、一人たりとて居なかったら話が成り立たなかった。
一方この作品では、「何のために居るの?」というキャラが存在してしまっている。
いることの必然性を感じられないキャラがいる。それだけなんだけど、それがあまりに大きな失点。
構成の巧妙さはここ最近のラノベの中ではトップクラスだと思える。
だけれども偉大すぎる先達によって、魅力が希薄化されてしまった感のある本作。
良くできてるなとは思うのだけど、バッカーノ!がどうしても頭をよぎる。
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